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協会だより
更新日:2015年2月9日
◇ 2月のおたより  ◇
 
 2月に入り、インフルエンザの流行は少し下火になったようですが、まだまだ注意を怠らないようしたいと思います。さて今月はアセトアルデヒドを取り上げて見たいと思います。



アセトアルデヒドの発生源は木材で、エタノール(アルコール)が関与

 アセトアルデヒドは、木材から発生することが知られています。トドマツやカラマツ等の針葉樹、広葉樹のヤチダモからの放散が認められています。また最近国産建材用木材であるスギ材からの発散が確認されています。
 (独)森林総合研究所が行った研究の結果、木材からのアセトアルデヒド放散要因としてエタノールが関与していることが明らかとなりました。このことから、建材や住まい方に気を付けることで、シックハウス症候群の原因となるアセトアルデヒドの放散を抑制することができます。
 アセトアルデヒドは、自然界のなかでは生物の代謝過程で生成される物質であり、人体でも飲酒したときにアルコール脱水素酵素(ADH)によりエタノールが分解される過程で生成されますが、毒性を有するため二日酔いの原因物質ともいわれています。その一方で室内空気中に検出されることもあり、シックハウス症候群の原因物質の一つとされていますが、室内にどのような仕組みで発生するのかは不明でした。
 (独)森林総合研究所の研究では、木材中のADHによりエタノールがアセトアルデヒドに変換されるとの仮説に基づき、木材のみの場合と木材にエタノールを添加した場合に放散されるアセトアルデヒドの量を比較しました。その結果、木材のみでは定量下限値以下でしたが、エタノールを添加した木材からはアセトアルデヒドが検出されました。比較のために使用したろ紙では、この現象はみられませんでした。
 次に、木材の部分ごとの作用の大きさを調べたところ、エタノールを添加したときのアセトアルデヒド放散量はスギもヒノキも辺材より心材の方が大きい結果でした。スギは樹木の状態では辺材の形成層付近にADHが多く分布するとされていましたが、今回の結果では心材の放散量が大きかったため、木材内に存在するADHだけでは説明できないことになります。


木材の高温滅菌処理でアセトアルデヒドの発生皆無

 そのため、ADHを持つ菌体が伐採後に外部から付着する可能性があるかどうかについてスギの心材を使って調べたところ、伐採後すぐの乾燥していない生材にエタノールを添加した場合、アセトアルデヒドの放散が認められました。また、常温で2週間室内に放置した気乾材では、発生するアセトアルデヒドの量がより大きくなりました。さらに、滅菌処理後の木材にエタノールを添加したところ、アセトアルデヒドの発生が大きく減少することがわかりました。常温のガス滅菌処理では生材に対してあまり抑制効果がみられませんでしたが、高温滅菌処理では完全にアセトアルデヒドの発生を抑制することができました。このことから、常温ガス滅菌では菌体は死滅するが、ADH事態は死活してないことが考えられます。

 これらの結果から、エタノール添加による木材からのアセトアルデヒド放散は、元々木材中に存在するADHによるものと、伐採後の加工過程で空気中から木材に付着した菌体が持つADHとの複合作用によるものであるという機構が推定されます。



接着剤からのアセトアルデヒドの放散に注意

 この研究で、木材や木質材料そのものから放散されるアセトアルデヒドはゼロではないものの、その量はエタノールが接触した場合に放散される量に比べて極めて小さいことがわかりました。実際の居住環境で木材が露出しているような部屋で大量にアセトアルデヒドが検出される場合は、何らかの形でエタノールが関与している可能性が非常に高いと考えられます。これは木材を媒体とする二次的な発生要因であると考えられるため、塗料や接着剤等の建材だけを注意すればよいのではなく、洗剤や清掃用品などの日用品や住まい方も含めてエタノール源に注意する必要があります。
 木材以外のアセトアルデヒド発生源として酢酸ビニル樹脂系接着剤からの放散が多いことが分かっています。また水系合成塗料やエタノールが使用されている自然系塗料からもアセトアルデヒドが多量に放散されている事例があります。これらの接着剤や塗料には、アセトアルデヒドの成分表示はされていません。


アルコール系洗剤の使い方に配慮

 アセトアルデヒドは、発生源や発生機構が完全に明確になっていない為に、製品安全データシート(MSDS)や、成分表などでアセトアルデヒドが含まない材料を用いたにも拘わらず、施工後指針値をオーバーする例が多々あります。その一つの要因は、我々が身体に取り入れたエタノール(エチルアルコール)が肝臓で酸化されてアセトアルデヒドなるように、他の物質からアセトアルデヒドに変化することです。これがアセトアルデヒドの対策を困難にしている一つの要因と考えられますが、とりあえず生活の中で出来る対策としてアルコール系洗剤で木質性の建材を清掃しない事です。

(独)森林総合研究所HP記事引用



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本部 安藤研治
 
 
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