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協会だより
更新日:2015年7月09日
◇ 7月のおたより  ◇
 

7月に入り、梅雨の影響により各地で降雨量が増えていますが、梅雨時は子供が体調を崩しやすい時期で注意が必要です。 さて今月はこの時期に悩まされる水虫を取り上げて見たいと思います。

ジメジメとした湿気が気になりだす6月。水虫治療薬のTVコマーシャルを見ては「今年も水虫の季節か……」とゆううつになる人も多いだろう。水虫は日本人の4〜5人に1人が持っている身近な病気でありながら、なかなか完治せずに毎年この季節になると繰り返す人が後を絶たない。水虫にまつわる誤解や治療のポイントを、東京女子医科大学皮膚科学教室准教授の常深祐一郎氏に聞いた。正しいケアで、今年こそ水虫を退治しよう。

■はだしで過ごす場所に水虫あり

気になる水虫、今年こそなんとかしたい。(c)paisan changhirun-123rf 気になる水虫、今年こそなんとかしたい。
 「お父さんの水虫、うつっちゃったじゃない!」
 夏が近づくと聞こえてくる家族の怒りの声。
風邪ならここまで罵倒されずに済むのに、水虫となると 話は別だ。水虫は数ある身近な病気の中でも、特にうつ されたくない感染症の一つといえるかもしれない。
 水虫は、白癬(はくせん)菌というカビ(真菌)の一種が、 皮膚の角質層に感染して起こる病気だ。足にできる水虫を 足白癬、爪の中に入り込んだものを爪白癬という。感染す ると、足の裏に小さな水ぶくれができたり、足の指の間の皮がふやけたりする(表1)。

表1.足に出来る水虫の種類

白癬菌が足に付着しやすい場所は、大勢の人がはだしで利用するプールや温泉、スポーツジムなど。床に落ちた菌を踏んで、足についたまま1日も放置すれば、感染する可能性がある。
 続いて起こるのが、家庭への“お持ち帰り”である。菌を踏んで家まで持ち帰った人が、家中に菌をデリバリーして家族が感染し、症状が出始めて「犯人」がののしられる――という図式だ。

■水虫が好むのは「高温多湿」、だから働き盛りの男性の足が狙われる

 水虫は梅雨時から夏にかけて流行するが、なぜ夏なのか、常深氏に聞いてみた。
 「白癬菌はカビの一種なので、お風呂のカビと同様、気温と湿度が上がると繁殖スピードが速くなります。だからといって、水虫に感染するのは夏だけではなく、実は一年中起こります。ただ、冬は、感染しても菌の活動性が低く、症状が現れないのです。元々、水虫に悩む人は菌を一年中ずっと持っていて、梅雨のころから症状が出て、秋に治ったと思ったら、また翌年の夏に同じ菌が活動を始めて症状が出てくる――というサイクルを延々と繰り返しています」
 水虫は、小学生でも感染するが、圧倒的に多いのは働き盛りの男性だ。年齢と共に増加して、50代あたりがピークとなり、60〜70代には減り始める。リタイアする位の年齢で症状が出なくなる理由は、「靴をはく時間が減るから」(常深氏)。つまり、1日中靴で過ごす生活が、ビジネスパーソンの水虫を増やしているといえるだろう。

表2 水虫の治療に用いる抗真菌薬(処方薬)

■リタイア時期から目立ち始める「爪白癬」には経口薬が効く

 足の皮膚にできる水虫の発症年齢は50代あたりがピークで、リタイアして一日中靴を履かなくなると、徐々に症状が軽くなっていく。それに対し、リタイア前後を境に目立つのが、爪の水虫、「爪白癬」である。長い間、足の水虫を繰り返しているうち、爪に白癬菌が入り込んで爪白癬となり、皮膚の水虫が治った後も残るからだ。外用薬で治る皮膚の水虫とは異なり、爪白癬治療の基本は経口薬となる。体の内側から攻めなければ、爪に入り込んだ白癬菌まで薬が行き渡らないからだ。服用期間は、爪が伸びきるまでの半年か、長いと1年程度。ごく軽症なら外用薬(※)でも効果があるが、中等症以上では完治はなかなか難しい。
 最近では、爪白癬へのレーザー治療も存在する。常深氏は「ごく軽症であればレーザー治療で治ることもあるのでは」と話す。ただし、外用薬同様、治療した部分にしか効かないので、治療した爪は治っても、他の爪に菌が残っていたりする。しかも、爪白癬へのレーザー治療は自費診療で、一指だけで1万円以上かかることもある。外用薬もレーザーも、経口薬を飲めない人がある程度の改善を目的とするなら良いが、完治を目指すなら、現時点では第一選択ではないようだ。
(※)2014年9月2日、日本で初めて爪白癬に適応を持つ外用の抗真菌薬エフィナコナゾール(商品名クレナフィン、科研製薬)発売

■こんなにある! 誤解が生む、水虫ケアのNG例

 「水虫の薬の使い方には誤解が多く、それがもとでなかなか完治しない人が多い」と常深氏は指摘する。以下に代表的なNG例を紹介しよう。

NG例【1】 治りきる前に外用薬をやめて、菌が復活する
水虫治療に用いる抗真菌薬の塗り薬(表2)は、菌を殺す薬ではなく、菌の増殖を止める薬だ。菌がいる古い角質が新しい細胞に押し出され、垢になって落ちていく、この期間、菌の増殖を止めれば菌はすべて押し出される。しかし、角質が落ちるまでの期間は1〜2カ月と長いので、完全に症状が消えてからも1〜2カ月は塗り続けなければならない。
NG例【2】 外用薬の塗り方が不十分である
菌が多いのは、症状がある場所だが、他の場所に菌がいないわけではない。塗り残せば生き残った菌が増殖するので、指の間、足の裏、土踏まず、かかとまで、くまなく塗るとよい。
NG例【3】他の病気を治さないまま、水虫の薬を塗って悪化する
水ぶくれがつぶれてジュクジュクしている、ふやけて擦り切れている、など、弱った皮膚に抗真菌薬を塗ると、水虫への効果以前に、皮膚への刺激で悪化してしまう。これもよくあるNG例だ。この場合は、かぶれや湿疹など、水虫以外の病気を先に治すことが先決。湿疹ならステロイド薬の外用、化膿しているなら抗菌薬を服用して、きちんと治してから水虫治療に入るべきで、そうした判断は素人には不可能。皮膚科専門医による見極めが必要だ。
NG例【4】 かゆいから水虫だと思い込み、薬を塗って悪化する
 「足の裏の皮がむけてかゆい=水虫に違いない」と思う人が多い。テレビのCMを見ても、いかにも水虫はかゆいというイメージが強いが、実は、かゆくなるのは水虫の約1割にすぎない。かゆい病気の代表は湿疹で、かゆいならむしろ水虫ではない可能性が高いのだという。
なお、水虫に悩む人にお勧めしたいのが、5本指ソックスだ。「その効果は顕著です」と常深氏も太鼓判を押すほど。皮膚の病気全般に言えることだが、指の間や脇の下のように密着した部分は湿度が高く、皮膚同士がこすれるため、湿疹であれ何であれなかなか治らない。皮膚と皮膚を引き離す5本指ソックスは確実に効果があるというから、ぜひ試してみたい。

■水虫は完治する!

 水虫対策の基本は、菌をもつ人自身がしっかり治療を受けることと、再びうつされてないこと、そして周りへの感染を防ぐことだ。対応策は右の表に示した通り、まったく難しいことではない。それでも水虫に悩む人が減らない状況について、常深氏はこう話す。
 「水虫は治らない病気だと言われてきましたが、それは患者さん側に多くの誤解があってこじらせてしまうためです。
また、治療する側も、正確な情報を伝えたり、的確な指導をしていない医師が多いのも事実です。根気よく正しく治療すれば、水虫は完治します。治療には数カ月かかりますが、自己流の対処でこじらせる前に、専門医のいる医療機関を受診してください」。









「日本経済新聞 電子版ライフ引用」

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