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協会だより
更新日:2018年6月1日
◇ 6月のおたより  ◇
 

 皆様のお陰を持ちまして2017年度の総会・成果発表会・健やか住まい方シンポジウムを無事に終了することが出来ました。各研究部会の発表に24H換気の重要性や必要性の発表が多くありました。

そんな時に興味深い記事を最新の健康ニュースで見つけましたのでご紹介します。
http://kenkounews.rotalaallichii.com/posts_list/





やっぱり清浄な空気が体に良い。
空気がきれいな地域に住んでいる人は炎症が少ない

(2017年5月) "American Journal of Epidemiology" と "International Journal of Epidemiology" に、大気汚染と慢性的な炎症(後述)の関係について調べた2つの研究が発表されています。(2つの研究に特に関係はありません。 同時に見つけたのでまとめました)


"American Journal of Epidemiology" の研究
"American Journal of Epidemiology" に掲載された復旦大学(中国)の研究では、調査対象となった8種類の炎症マーカーのうちの半数と大気汚染とのあいだに関係が見られるという結果になりました。


研究の方法
2014年に南京で開催されたユース・オリンピックの開催中に大気汚染が緩和される(*)のを利用して、ユース・オリンピックの開催前から開催後にかけて31人の健康な成人を対象に、全身の炎症の程度の指標となる8種類の炎症マーカーを測定し、大気汚染の程度の変化との関係を調べました。

(*) 国際オリンピック委員会の会長から「ユース・オリンピックの開催期間中に南京市の汚染が基準超過したら大会は延期する」と警告されていたので、大会期間中には大気汚染濃度が上がらないようにしていたのでしょう。


結果
ユース・オリンピックの開催中には開催前に比べて、2種類の炎症マーカー(可溶性CD40リガンドとインターロイキン1β)の血中濃度が低下していました。
また、大気汚染が再び悪化したユース・オリンピックの開催後には、別の2種類の炎症マーカー(C反応性タンパク質と血管細胞接着分子1)の血中濃度が増加していました。
大気汚染物質のうち炎症マーカーとの間に関係が見られたのは、PM2.5(後述)とオゾンでした。




"International Journal of Epidemiology" の研究
"International Journal of Epidemiology" に掲載された香港中文大学などの研究では、PM2.5の汚染がひどい地域に住んでいる人は炎症マーカーの1つであるC反応性タンパク質(CRP)の血中濃度が高いという結果でした。


研究の方法
台湾に住む男女3万人の自宅におけるPM2.5の濃度(2年間の平均値)を、人工衛星から送られてくるデータに基いて推定し、血液検査で調べたCRP血中濃度との関係を分析しました。


結果
CRP血中濃度に影響する様々な要因を考慮しつつデータを分析したところ、大気中のPM2.5の濃度が5μg/m3増えるごとに、CRP血中濃度が1.31%増加するという計算になりました。




炎症について
炎症は病原体や有害物質に対して免疫系が引き起こす自然免疫反応の一部で、傷の治癒を促進したり病原菌を抑制したりするのに役立ちます。
しかし、炎症は健全な組織まで傷つけてしまうので、感染症や怪我などが生じていないときにも炎症がだらだらと継続する慢性的な炎症は体にとってマイナスとなります。 慢性的な炎症はガン・糖尿病・心血管疾患(心臓病や脳卒中)・リウマチ・抑鬱・アルツハイマー病など様々な病気の一因になると考えられています。
慢性炎症の原因となるのは、体内から排除されずに残っている病原体・有害物質・免疫系の異常・運動不足・肥満・遺伝的体質・加齢などですが、食事内容も慢性炎症に大きく影響します。


大気汚染と炎症と健康
これまでの研究で、大気汚染により次のように様々なリスクが増加することが示されています:

  • ガンになるリスク
  • ガンで死亡するリスク
  • 乳腺密度が高くなる(乳ガンのリスク要因)リスク
  • 糖尿病になるリスク
  • 動脈硬化になるリスク
  • 高血圧になるリスク
  • 心臓発作のリスク
  • 脳卒中になるリスク
  • 脳が萎縮するリスク
  • 認知症(アルツハイマー病を含む)になるリスク
  • 癲癇(てんかん)の発作が生じるリスク
  • 肥満のリスク
  • 抑鬱のリスク
  • 自殺のリスク
  • 肝斑(肌に生じる茶色・黄褐色・黒色などのシミ)のリスク
  • 肝線維症のリスク
  • 腎機能が低下したり腎臓病になったりするリスク
  • 喘息のリスク
  • 胎児が生後に呼吸器系の病気や注意欠陥・多動性障害(ADHD)になるリスク

大気汚染でリスクが増加する病気の多くが炎症が関与する病気でもあることがわかります。
炎症は、喘息・腎臓病・動脈硬化・肥満などにも関わっています。




PM2.5について
PM2.5とは粒子径が2.5μm以下の粒子状物質(Particulate Matter)のことで、日本語では「微小粒子状物質」とも呼ばれます。
PM2.5の発生源は火力発電所・工場(ディーゼルとガソリン両方)・自動車・バイクの排気ガス、道路・タイヤ・ブレーキの磨耗により生じる粉塵、焚き火〜森林火災などです。
PM2.5は交通や産業活動が活発な地域における主要な大気汚染物質であり、そのような地域の住人全員の健康に大きく影響します。
PM2.5はサイズが小さいため、肺の奥深くにまで入り込んで有害性を発揮します。
PM2.5により心臓発作・脳卒中・肥満・糖尿病・肺ガンなどのリスクが増加すると考えられます。
各地域のPM2.5濃度は環境省が運営する「そらまめ君」や、「PM2.5まとめ」で知ることができます。







2018年度の研究部会も6月より、趣意策定がスタートします。当協会員以外の方を対象としている見学参加も出来ますのでご参加をお待ちしております。

 

事務局 和田
 
 
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